平壌大成山館(平壌珈琲バー)に燃える革命の炎/コーヒーバカ一代

1.青いのか革命の炎は

 産経新聞2006年1月6日朝刊に掲載された北レス記事。一際目を引くのは「平壌カフェバー」である。私は記事を読むなり衝撃を受けてしまった。カクテルの名称が「平壌の夜」「統一」「我々はひとつ」。「平壌の夜」は「グラスが2段式でアルコール度の高い酒に火を付け青い炎を暗がりで楽しむ。」接待員同志は「主体思想塔を象徴しているという人が多いですが自由に発想を」と言った。

 ・・・・違う。革命の炎は真っ赤でなければならない。共産圏だし。平壌の案内員同志は主体思想塔の炎を「革命の炎がメラメラと・・・」と、「メラメラ」の部分に妙に感情移入をして笑いを取ったりしていたものだ。青い炎を主体思想塔の炎と言った同志よ、私のように一度案内員に頼んで平壌ナイトツアーに出かけるがよい。真っ赤に燃える革命の炎を目撃できるであろう。ただしてっきり案内員同志の好意と思ったら日本円で2,000円取られた私はマヌケであったが。

 さて、そういうわけで中国在住CAPTAIN同志が韓国語誌でこの平壌カフェバーを発見。所在を確認のうえ訪問してくれた。 産経で紹介されているカクテルの他に、「口笛」というカクテルもあったとか。口笛・・・・。ロキッとシビれる名称である。

 それにしても「平壌の夜」「統一」「我々はひとつ」「口笛」・・・衝撃である。それぞれに由来がありそれを具現化しているとでも言うのだろうか。想像てゆっか希望としてはその他に「革命」「勝利」「栄光」「楽園」「建国」「烽火」「戦勝」を希望する。でもそれぞれをどんな作り方をするんだろうか。

 そもそも「統一」と「我々はひとつ」って差別化が難しくないか?実はベースもそれに加える果汁の類も一緒だが、「統一」だったらステアするだけで「我々はひとつ」だったら激しくシェイクするってのはどーだ?で、「南北人民が真に交流してこそいい味が出るのです。それをシェイクすることで表現しているのです。」と接待員同志が説教してくれるとか。

 本来カクテルとはその日の気分によって好きなものを飲むのがいいんじゃないかと思うが、私の仮説どおりに革命的名称のカクテルが並んでいるとすれば、ここに来る人民達は常に革命的な気分で来るんだろうか?アフターファイブになお革命的な人民ってのは現代中国では絶滅してしまったと思うが。いやまてよ。中国では60年代の文化大革命チックな内装の飲み屋が、昔を懐かしむ人民達で繁盛していると聞く。この平壌カフェバー、形を変えた文革バーなのかも知れない。

 しかし実際のところ、カクテルは何種類あるのだろうか?そしてここで働く接待員同志達は、その由来を全て理解しているとでもいうのだろうか?そして客たちに、その全てを説明してくれるとでも言うのだろうか。なんだかロキロキ無限大の予感。


2.衝撃の平壌コーヒー

 CAPTAIN同志は1人で酒を飲むのもアレなんで「平壌コーヒー」を注文。そしたら画像のようなアイスコーヒーが出てきた。

 おおおおおっ!!これはたっしかに平壌コーヒー!!だってハングルで「平壌」と書かれてるもん。しかも字が上手。美しい平壌出身の接待員同志が心を込めて書く姿が想像される。CAPTAIN同志はこのとき一人で、平壌コーヒー飲んですぐ帰ろうとしたら接待員同志が「チェミオプソヨ=つまらないですか?」と聞いてきたのだという。これは北レスにはよくあること。以前いろんな北レスで食が進まないと「マズいのか?」と何度か聞かれた経験がある。私はビール党なんですぐお腹が膨れてしまうのが原因なんだが。

 ところで「平壌コーヒー」が可能だとすれば、理論的には「開城コーヒー」も「元山コーヒー」も可能のはず。私は心に決めた。近いうちにこの平壌カフェバーを訪問し、カウンターに座る。そして「平壌コーヒー」を注文。二杯目には「開城コーヒー」を、三杯目には「元山コーヒー」を要求。このあたりで親切な接待員同志は「お腹大丈夫ですか?」と気遣いをするだろうが、とりあえずお気持ちだけいただくこととして四杯目へ。

 四杯目は字数を多くして「金剛山コーヒー」を要求。そう、ここで三文字と難易度を高くしてみるのだ。接待員同志は笑ってくれるだろうか?そして五杯目には遂に「朝鮮民主主義人民共和国コーヒー」を要求。なんと字数は11文字だ!!ここで笑いが取れればしめたもの。

 五杯目は趣向を変えて「ソウルコーヒー」はどうだ!?難易度としては「平壌コーヒー」よりも低いとさえ言える「ソウルコーヒー」。しかし接待員同志が見たことのないはずの都市、ソウル。微妙な心の揺らぎが見えるかもしれない。そして最後、「同志が今一番書きたい言葉を書いてみてください。」と要求するのだ。果たして同志はどんな言葉を書いてくれるのか・・・・「コーヒーバカ一代」と書くのだろうか。その前にお腹壊すなこりゃ。
 CAPTAIN同志が訪問したのは旧暦の大晦日。向かって右側の画像には、中国語で「当店は春節期間中も通常営業いたします」と簡単に書かれているのに対し、朝鮮語では「我々はお客様の皆様方が楽しい旧暦のお正月を過ごせるように通常営業にて特別ご奉仕いたします。」と丁寧な書き方をしているのがヨい。

 営業時間は24時間、店内には舞台もあり、公演は夜10時から。北レスとはやや雰囲気の違った公演になることだろう。私はこのロキロキ感を抑えきれず、3月下旬に北京を訪問することに決めたが、カクテルの種類を確認することと、アイスコーヒーを六杯飲むことをマニフェストとして掲げる。
 名刺。CAPTAIN同志も指摘していたが、「WINDSOR」という洋酒は韓国製のはず。ただし名刺は在中国の韓国系印刷屋さんが担当したはずで、このあたり韓国客相手の戦略なんだが印刷屋さんの趣味なのかよくわかりませんな。地図もわかりやすくてグッドです。1階の工商銀行を目印にするとわかりやすいとのこと。情報と画像は全てCAPTAIN同志ご提供による。
                                 (CAPTAIN同志2006年1月訪問)

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