7階級制覇への道/北京大成山館カクテルバトル編
つい24時間前、壮絶なるコーヒーバトルを終え、その後さらに海棠花3号店で同志達とフィッパラム等一緒に歌い、ごキゲンな私であったが、翌日午前中はさすがに二日酔い気味。ここはじっと耐えて夜のカクテルバトルに向け体調を整えたのだった(キャベ2持ってきてよかった)。
ここ大成山館にはカクテルが7種類用意されている。メニュー順に列挙する。
1.平壌の夜
2.統一
3.口笛
4.南男北女
5.アリラン
6.我々はひとつ
7.駿馬処女
・・・・。なんとも北朝鮮っぽい名前である。大学入学当時の私はあまり酒が飲めなかったのだが、大酒飲みになる前段階で、サントリーから発売されていたトロピカルカクテルというものをよく飲んでいた。ブルーハワイ、シンガポールスリングなんてのがあったなあ・・・・。カクテルというものは口当たりがそれほどキツくなくても、けっこう酔ってしまうものである。ベースになった酒がきつければそれは当然のことなのだが。
そういうわけで全7種類を制覇することにした。おおおっ、複数階級制覇に挑むプロボクサーみたいでなんだかカッコいいぞ。
1.平壌の夜
公演が夜10時からだということは知っていたので、それに合わせて夜8時半に到着。ほぼ一日ぶりの大成山館である。昨日主に接待してくれた呉同志は私の顔を覚えていてくれて(そりゃそうだって)、明るくあいさつしてくれた。またカフェラテに我々のリクエストに応じて「開城」とか「白頭山」とかハングルで書いてくれた鄭同志もカウンターの中から笑顔で会釈してくれた。笑顔てゆっか爆笑を我慢していたようにも見えたが。
注文を取りにきた呉同志、「昨日はお腹、大丈夫でしたか?」・・・や、優しいっ!!「うん。大丈夫。今日はカクテルを飲みにきたよ。」というとクスッと笑う呉同志。私はメニュー順に「平壌の夜」を注文。本日のカクテルバトルはこの瞬間ゴングが鳴らされたのだった。
やがて運ばれてきたのは2階建てカクテルである。1階部分は明治屋のイチゴシロップ的に赤く、2階部分はコーヒー色である。
今日の計画はこうだ、カクテルの名前にはすべて由来があるはず。7階級制覇の過程でそれをすべて聞き出すのだ。そして同志達と話が弾めばそりゃー楽しいはずである。
あ「呉同志、この『平壌の夜』の由来は?」
呉「主体思想塔の赤い炎が大同江を照らしている様子を表しているのです。」
この「平壌の夜」、他のカクテルが40元から45元であるのに対し、60元(約850円)と高い。さらにメニューには「恋人や友人と飲むカクテル」という注意書きさえ見える。まずは2階部分から飲んでみると・・・・うっ!!キッ、キツい!!これってベースは何なんだろう。白酒じゃないな・・・ウォッカじゃないかこれ?
下の赤い部分は・・・色はいちごシロップみたいだが、甘くない。アルコール分もないように思える。つまりこれは男性がキツい2階部分を、女性が1階部分を飲むという趣旨か?男性がキツい酒に苦労していると彼女が「だいじょーぶ?」と心配する。すると男性が「ハハ。バカだなあ。大丈夫だよこれくらい。」彼女が「まあ、頼もしいわ。」とか。それでロキロキするとか。
あと二人が同時に飲むと自然に顔が接近してEカンジになってしまうという意図もあるのかもしれない。それにしても2階部分はキツい。早くも酔ってきた。7階級制覇できるんだろうか?
2.統一
2階級目は「統一」。全体的にオレンジ色である。
呉「浮かんでいるのはスイカです。底に赤いシロップが敷かれているのがご覧になれますか?」
あ「あ、ホントだ。ちょ、ちょっと待てよ。上に赤、下にも赤・・・。赤で挟まれているワケだ。」
呉「さようでございます。」
あ「ひょ、ひょっとして『統一』という名のカクテルには、実はものすごく政治的な意図が・・・」
上(北)も下(南)も赤・・・。名前が「統一」かぁ・・・。呉同志からはもう少し深い答えが返ってきたのだが、恐ろしくてとても書けない。次いってみよー!!次お願いしまーす。
3.口笛
呉「『統一』はおいしかったですか?次は『口笛』でしょうか?」
な、なぜカクテル完全制覇というオレの野望を呉同志は知っている?そりゃ気付くって。
呉「軽快に口笛を吹く若者の爽やかさを表しているのです。レモンの鮮やかな黄色と青空の色が印象的でしょう?」
3階級目の「口笛」からは私が頼まなくても由来を解説してくれるようになった。エライぞ呉同志。北レス的に気の利く同志だ。しかし口当たりは優しいが、酔いの回りが異常に早い。このころ公演が始まったのでノッてしまったが、カクテルバトルとしてはいい休憩になった・・・とこの時は思っていたのだが・・・。
4.南男北女
私が入店したころには客はなかったが、公演の始まる夜10時にはほぼ満員になっていた。公演が終わると真っ先に私のところに注文を取りにやってくる呉同志。ニクいヤツだ。
呉「上と下にさくらんぼが見えますか?」
あ「ドキッ!!また上と下に赤・・・ひょ、ひょっとして・・・」
呉「南の男が北の女を待っているのです。」
おお。私の考えすぎだったようだ。なんだか安心した。たしかに統一旗も色は青だし。ここは素直にそう思うことにしよう。これが一番わかりやすかった。
5.アリラン
この訪問記は取材メモを見ながら書いているのだが、3階級目の「口笛」あたりまではしっかりとした文字でメモっていたのに、4階級目から急に内容が簡潔てゆっかいい加減になり、この5階級目「アリラン」に至っては何が書いてあるのかさっぱわからん。
途中の公演がいいインターバルになったと思っていたが、時間が経過した分酔いが回ったようである。「アリラン」に関しては呉同志が「アリランの悲恋物語」を延々と語ってくれたような記憶もあるが、ほんの数秒だったようにも思える。メモには「最下部にどっちかのびがある」って全然意味わからん。そろそろ限界かもしらん。
ここで7階級制覇は一旦断念。自分が自分に対してレフェリーストップを宣告したのである。3階級制覇に失敗した時のファイティング原田選手の無念さはきっとこういうカンジだったに違いない。呉同志は「次のカクテルにされますか?」と行ってくれたがやっぱし限界・・・ここでギブアップである。
6.我々はひとつ(ウリヌンハナ)
しかし、このまま引き下がる私ではない、KO負けしても不屈の闘志で再起した輪島功一のように、翌4月17日、CAPTAIN同志と一緒にリベンジを挑んだのである。ただこの日も北京平壌館で飲んだあとでけっこう酔っていたのだが、あと残された2階級を制覇すべく大成山館を再訪したのであった。一旦は川嶋勝重に敗れながら、再起を決意した徳山昌守の気持ちはこんなだったに違いない。
呉同志「ウリヌンハナでございます。」
あ「うん。そしてっ!?」
これだけで私の言わんとすることを理解する呉同志。なかなか賢いコちゃんだ。
呉「我々朝鮮民族は『白衣民族』と呼ばれるほど白い服が好きです。その白を表しているのです。」
1980年、WBC世界ジュニアフライ級タイトルマッチの防衛戦のため後楽園ホールのリングに立った当時の世界チャンピオン、金性俊は、民族衣装を纏っていた。その鮮やかな白は今でも私の記憶に残っている。ちなみにトランクスも白だった。試合は日本の挑戦者が勝ったが。
この「我々はひとつ」、CAPTAIN同志が、製造過程において中国の強い酒を2種類、ヨーグルト、オレンジジュース、氷をミキサーにかけているところを目撃している。やはりベースは強い酒だったのだ。またもやヨイヨイのベロベロになってきた。
7.駿馬処女
いよいよ7回級目、「駿馬処女」である。最後だ。頑張れオレ!!ちなみに朝鮮語の「処女」とは未婚女性とか若い女性とかいう意味である。また「駿馬処女」とは私がごひいきにしている
大連平壌館の公演でよくオープニングに歌われる曲の名前でもある。
呉同志「若い女性は赤が好きです。上に乗っているレモンが処女です。」
取材ノートのメモが怪しいが、そういう説明だったと思う。半分近く飲みかけてから慌てて写真とったことからもヨイヨイぶりが窺われるだろう。ともかく、大成山館のカクテルすべて、すなわち7階級を制覇したことになる。おおっ、6階級制覇を成し遂げたボクシングのスーパースター、オスカー・デラホーヤを上回る快挙である。ここに至るまで挫折があったこと、疑惑の判定もあったこともよく似ている。
そういうわけでメロメロのヨイヨイになりながらもカクテルバトルは最終回のゴングを聞くに至った。コーヒーバトルも厳しい戦いであったが、カクテルバトルもまた違った意味で厳しい戦いであった。
この7種類のカクテル、具現化に苦労したものもあったに違いないが、よくぞ考えついたものである。私としては、今後「光明」「革新」「栄光」といったより抽象性の高いものにも挑戦してほしいと感じている。そして呉同志に解説してもらいながらマターリと飲めればいいなあ・・・・(うっとり)
(2006.4月16日と17日にかけ7階級制覇)
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