真夏の夜の夢〜北京牡丹館訪問記/ヤオヤとはヤサイを売る店ですか?

1.その時あなたは薔薇になり

 2005年夏、私は平壌アリランツアーを終えて北京に戻った。通常、北朝鮮を出るとなんともいえない虚脱感てゆっか疲労感のようなものが全身を襲い、チェックインと同時にホテルのベッドに倒れこむものなんだが、今回はロキロキ感が引き続き全身を覆っていた。なぜなら、北京の北レスでCAPTAIN同志とお食事の予定があったからである。

 CAPTAIN同志との待ち合わせ時刻は午後6時。それまで商務中心でネットいじったり、コーラ飲んだりして過ごしたのだが、ちょっと早めに出て他店の位置を確認するなどして、ダラダラと過ごした。

 実はCAPTAIN同志と行くことにしていたのは牡丹館ではなく海棠花本店。北京の北レスとしてはもっとも格式のあるところだ。約束の6時よりちょっと早く到着したら、CAPTAIN同志もすでに来ていた。CAPTAIN同志は私よりも3日ほど早く平壌旅行を終えて北京に戻っていたのだ。海棠花の入り口のところであいさつもそこそこに北レス談義に花が咲いたのだが、CAPTAIN同志が「牡丹館って、すぐ近くにあるんですよ。」と言う。

 CAPTAIN同志の指さす方向を見ると・・・おおおっ!!ち、近いっ!!近いぞこれはっ!!よく距離の近さを「スープの冷めない距離」というが。これじゃカップラーメンさえ芯が残ったものしかできないぞ!!要するに1分30秒くらいしかかからないという意味だ!!


2.その時ぼくは蝶になり 

 それにしてもこの近さは反則だ。CAPTAIN同志は以前レポを送ってくれたことがあったが私は全く初めて。海棠花に行く前にちょっと覗いてみよっと。時刻は午後5時45分。早いお客さんなら入り始める時間帯だ。

 入り口のあたりに赤いチマチョゴリを着た可愛らしい女性が一名。「見るだけなんですが入っていいですか?」というと一瞬怪訝そうな表情を見せたが「いいですよ。どうぞ。」と中を案内してくれた。入り口のあたりにちょっとしたみやげもののスペースがある。1階にはまだ客がなく、規模としては中程度か。図々しく2階も見せてもらった。2階は中国のレストランにありがちな個室になっていた。接待員同志達は6名ほどいるようだが、やはり見るだけの客には反応が今ひとつ。
 
 しかしここで突然いいアイデアが。そういえば昨日の今頃、まだ平壌にいたではないか。そう、私は今朝平壌から戻ったばかりなのだ。

私「実は今朝、平壌から戻ったばかりなんだよ。」
同志「えーっ!?そうなんですか?」
私「そう。マスゲーム見てきたよ。」
同志「ええっ!!写真お持ちですか?」
私「うん。見せてあげる。」

 ここで接待員同志達の態度急変!!多くを語るより、下の画像を見ればおわかりいただけるであろう。
 左は美女達に群がられる(日本語としてヘンか?)CAPTAIN同志。右はごく自然に記念写真におさまる私と同志達である。画像では見えないが、私の隣の女性は私と腕を組んでいるのであ〜る!!しかし、牡丹館の同志達の喜びようはハンパではなかった。特にわずか24時間前に撮影した大マスゲーム“アリラン”の動画は効果絶大。同志達の生き生きとした表情でおわかりだろう。

 マスゲームのバックに流れる曲を「これはオジクハンマウムだね。」「パンガプスムニダ。多分これは最初の方。」とキャッキャッとはしゃぎながら口ずさむその姿は無垢な女性そのもの。それにしても普段ヒマでモテないこの私が、瞬間湯沸器的に若いチマチョゴリの女性達に囲まれてしまった。これまで数多く北レスを訪問した私であるが、北レス史に残るロキロキ度を記録したことを告白せざるを得まい。

3.この世の嘆きや悲しみを忘れて覚えた蜜の味

 そんなわけで楽しく過ごしたのだが、ワケあって食事は予定通りに歩いて1分半程度の海棠花本店へ(そのうちレポアップします)。2時間半ほど楽しく過ごしたのだが、主食の冷麺はさっきの牡丹館で食べようと私が提案。ここに北レス探訪史初の北レスハシゴが実現したのだった。

 歩いて1分半。さっきの赤いチマチョゴリの女性がめざとく私を見つけると私は「お久しぶりだね。」とあいさつ。同志は「お初にお目にかかりますね。」と答える。なかなかシャレのわかる同志である。

 我々は席につくとまずは冷麺を注文。先ほどの続きの最新平壌情報やマスゲームの話などで盛り上がった。9時近くという北レスとしては遅めの時間帯のためか、気づくとすでに1階には我々だけ。接待員同志達を結果的に独占することになってしまった。

 やがて支配人と思しき女性が接待員同志達に公演の準備を始めるよう指示を出し、なななんと我々二人だけのために公演が始まってしまったのだ!!それもマイク持ってタラタラと歌うわけでは断じてないっ!!気合入れて6曲も歌って踊ってくれたのだった。
 先ほどから何度か出てくる“赤いチマチョゴリの女性”が左の同志。名を韓同志という。なんと年齢はまだ19歳。多分数え年だろうからホント若い。画像はテレサ・テン「時の流れに身をまかせ」を歌っているところだが、並みいる北レス目線上手コちゃんの中でも、韓同志には大連平壌館の崔同志と共に、最上級の評価を与える。画像でわかるように、明るく暖かい目線が彼女の持ち味である。目線プリンセス・・・。そう。韓同志は目線プリンセスだ。目線プリンセスの目線を二人占めするCAPTAIN同志と私。至福の瞬間である。

 また真ん中の画像は「統一の虹」を歌っているところ。北京牡丹館にはステージがないのだが、向かって右側の死角にあたる部分から4名がイントロと共にサササッと出てきて、歌い終わると同時にサササッと手を振りながら戻っていくのである。なんとも可愛らしく、ロキロキする演出である。

 右の画像は民謡「ノドゥルカンビョン」にあわせて太鼓踊りを披露する同志。ポーズがビシッと決まった瞬間である。ククッ・・・(涙)我々二人のために・・・

 この日の公演は6曲。

1.パンガプスムニダ
2.アリラン
3.ノドゥルカンビョン(太鼓踊り)
4.時の流れに身をまかせ(中国語) 
5.フィッパラム(口笛)
6.統一の虹

  北京牡丹館はカラオケなのだが、「パンガプスムニダ」では間奏部分で同志達が手をつないであっちブラブラこっちブラブラして踊ってくれる。これがキュート!!また「統一の虹」では中央部に集まって縦のラインを作ると、ポーズを決めながらまた散っていくなど、他の北レスでは見たことのないプリティなデンスを披露してくれる。ナニ?そんな説明じゃどんなデンスかわからないって?ふふ。これは見たものだけにわかる幸せなんだろうな。でも北レスふぁんくらぶ会員諸君には特別に画像を提供しよう。
 左が「牡丹館名物パンガプスムニダでお手手つないであっちブラブラこっちブラブラデンス」である。このように華麗なステップを踏みながらブラブラしてくれるのである。なんだか形がウルトラ怪獣のペスターに似ているような気もするが、ペスターにはこういった華麗なステップはムリと思われる。

 また、右が「統一の虹=トンイルムジゲ」である。虹だから同志達でこうやって虹をかけているのである。2枚とも(画像提供CAPTAIN同志)ヨイ表情である。

 フィッパラムでは何故か私服の同志が出てきて歌ったのだが、歌い始めて間もなく“マイクをもう一本ちょうだい”と近くの同志に要求し、私を手招きするのであった。私がフィッパラムを口ずさんでいるのを目ざとく見つけたこの同志(年齢からしてたぶんリーダー格)の機転のきいた対応であった。しかし何故突然私服で・・・・部屋にいたら「面白い客が来ているから店に来てみろ」とでも言われたのだろうか。よく見るとこの同志、PRADAのTシャツを着ている!!画像はデュエットではしゃぐ私と、拍手を送るCAPTAIN同志。1階を完全に制圧した状況がおわかりいただけるであろう。

4.dreamy dreamy summer night

 この後、事実上北京牡丹館を貸切状態にした我々は、接待員同志達との夢のようなロキロキタイムを過ごしたのだった。
 平壌の画像を見せてあげる私と喜ぶ同志達。印象的だったのは、デジカメを私に返すとき、テーブルの上に置くことなく、必ず手渡しで丁寧に返してくれることだ。そして韓同志に日本語をキビし〜く指導する私。右は「旅の指さし会話帳」で韓同志と交流を深めるCAPTAIN同志。「旅の指さし会話帳」は北レスグッズとして定着した感があるな。うん。

 韓同志は勉強熱心だ。ただ「ヤオヤとはヤサイを売るお店のことですか?」との質問にはビビってたじろいでしまった。可憐な目線プリンセスの口から突然、あまりにも突然飛び出した「ヤオヤ」というあまりにも世俗的な単語。いったい、どういうきっかけで、どういった経緯で「ヤオヤ」を知るに至ったのか・・・・?なぜ・・・?「ヤオヤ」の闇はあまりにも深い。

 私にとって初の訪問であった北京牡丹館は、同志達の暖かい歓迎で深い印象を与えてくれたのだった・・・ヤオヤのナゾを残して。この後、CAPTAIN同志とまたまたKTVに行って盛り上がったことは言うまでもない。しかし、朝鮮族小姐とチークをキメている時も、韓同志の「ヤオヤ」という声がエンドレスで頭の中を回り、途切れることはなかった。ヤオヤ・・・ヤオヤ・・・・。余談だが、上海の「エンドレス」というカラオケはヨイ。
                                           (2005.8.20訪問)
                       
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