長春 妙香山酒店復活レポ “ショーゲキの金日成将軍の唄”

1.哀愁の街に霧が降る

 労働節(メーデー)で賑わう中国吉林省長春市。私はこの日、朝から足を棒にして探し回った結果発見した北レス、仁風閣での食事を終え、タクシーでホテルに向かうことにした。ここからホテルまでは建設路を走って途中から南昌路に入る。南昌路は以前妙香山酒店という北レスが存在した。「歌うピョンヤン同志」がレポしてくれたところである。しかし半年程前に閉鎖が確認されている。ところがタクシーで通りかかるとお、おやん・・・・?

灯りがついてますね。閉鎖したはずなのに・・・再開したのか?でも長春阿里郎館のように名前だけ残って実際は朝鮮族が経営してるってこともあるし・・・まだ喜ぶのは早い。この日はけっこう酔っていたのでこのままホテルに戻った。

2.チと寒かったかもしんない

 翌日、改めて調査に出かけた。お昼ちょうどの時間に到着。ゆうべは暗くて見えなかったが、看板が以前は青を基調としたものだったが、赤を基調としたものに変わっていた。たぶん妙香山の紅葉だろうな。そして入口に進むと両側に青いチマリョゴリの接待員同志。おお!!やはり妙香山酒店は復活していたのだ。

 中に入ると・・・おやん?お昼時というのに中には客はおらず、灯りもついていない。チと雰囲気が寒いか?でもまあいいや。“北朝鮮っぽいの好き”長春特派員と二人で訪問した私は壁際の席につく。注文を取りに来た接待員同志に早速「いつ再開したのか?」と聞くと「3月末に再開した。」と言う。話を聞くと中朝合弁で、社長は朝鮮族のようである。結局昼の部は客は我々以外になく、3人いる接待員同志も手持ち無沙汰のよう。夜は歌うそうなので夜再度訪れることにした。

左:店構え。復活・・・くく・・泣けてくるわい。
右:店内の天女の絵

3.輝け!!中国語NO.1北レスはキミだ!!

 北レスの歌は午後8時から始まるという原則に従い、7時半に到着。昼に会った私のことは覚えていて、にっこりと挨拶してくれた。近くのテーブルにはすでに先客がいて、いい調子で飲んでいた。なじみ客なのか、さかんに接待員同志に向かって「まだ歌わないのか?」「早く歌ってくれ。」と要求している。それに対して同志達は中国語で「もう少し待ってください。」と笑顔で対応している。やがて8時。歌と踊りが始まった。昼の部の時にはいなかったポッチャリ系の同志も加わって4人になっていた。

 私はすっかり調子に乗ってしまい、「パンガプスムニダ」では一緒に手拍子打ちながら唄ってしまった。中国人のグループに「あなたは朝鮮族なのか?」と聞かれたが、まあ似たようなもんだ。

 

左がオープニングの“パンガプスムニダ”。定番だ!!間奏の時に両腕をヒラヒラさせながら舞うのがタマランっす!!
右が昼食時にいなかった同志である。ポッチャリ系だ。昼は休んでいたのだろうか?中国語でテレサ・テンの“夜来香”を歌っているところ。非常に愛想がよい。
 


 この北レスの特徴としては中国語上手コちゃんが多いことが挙げられる。歌を始める時に、朝鮮語と中国語で“只今から歌と踊りを始めます”とアナウンスしていたが、非常に流暢な中国語と感じた。また客からの問いかけにも中国語で対応する等、中国語上手コちゃん度では今のところここが一番であろう。

左が主に接待してくれた金同志。右が中国語上手コちゃんNO.1の同志である(ゴメン氏名不詳)。よく見ると金日成バッジの下に皆ブローチをつけていますね。それぞれお洒落を楽しんでいるのでしょうね。

4.ショーゲキの“金日成将軍の唄”

 私は一つの仮説を信じていた。「北朝鮮の歌にはランクがあって、最上位に位置される“金日成将軍の唄”や“金正日将軍の唄”を酒席で歌うことは不敬である。」と。事実平壌の蒼光山カラオケでは女性達は決して最上位曲を歌わないし、在中北レスでも聞いたことはない。しかし、この仮説はチョーもろくも崩れ去った。

 この日、夜の部の公演として中国語曲を含め8曲を歌い切った同志達のシメの一曲はなんと“金日成将軍の唄”であった。オープニングと同じ二人の同志による歌であったが、仮説とはいえ固く信じていた自説が、ウルトラセブンのアイスラッガーによって首を切られたエレキングのようにモロくも崩れ去っていくのを感じていた。でも歌にはノってしまったが。

 彼女達が反革命分子であるはずもなく、これはまあ、なんというか酒席であっても自分が酔ってなければ歌ってもいいんだろうと解釈することにした。うん。多分そういった不文律みたいなものがあるんだろう。ってワケで無理やり納得してしまった。気がつくと店内は多くの中国人客で賑わっていた。長春妙香山は一度消滅した北レスが復活した例、そして私の仮説を覆してくれた北レス、そして中国語上手コちゃん軍団として長く記憶に残るであろう。

                                 (2004年5月2日昼と夜訪問)



左から:店内で配られたティッシュペーパー、箸入れ、名刺のコピー表と裏。名刺の地図を頼りに探してみてください。

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