大連平壌館 The sweetest taboo〜桃の木に桃の花咲く

1.マツタケあんまし好きじゃないけど

 10月下旬、大連に滞在した私は、大連市在住の日本人と大連平壌館でお食事した。70歳のお年寄りである。「朝鮮人はお年寄りを大切にしますからモテますよ。」と騙して連れて来たのである。

 この時期、とっても美味しいのはタルレである。日本語で言うと野蒜だが、辛く味付けしてあり(北朝鮮っぽい!!)、とても美味しい。ビールが進む一品である。また、マツタケのシーズンでもあり、接待員同志はマツタケ酒を薦めてくれた。店内にも「七宝山で有名なマツタケ料理」との手書き(北朝鮮っぽい!!)のポスターがあり、客には無料で試飲てゆっか、一杯ずつ味見させていた。これって販促としてはいい手段。私はあんまりマツタケ好きじゃないのだが、彼女達は日本人がマツタケ大好きだってのは知ってるみたい。青島海棠花でもマツタケの塩焼きを薦められたし。そういえば以前金剛山(北レスの名前じゃなくホンモノ)に行った時、マツタケを天ぷらにして、それにソースをかけたものがでてきて、何ともったいないことを・・・と思ったことがあったなあ・・・。

左が野蒜の朝鮮風。うまい!!

右がマツタケ料理販促ポスター。多分同志達の手書きによるもの。


2.桃の木に桃の花咲く

 私がご案内したお年寄りは北レス初体験であり、店内に掲げてある大きな絵に興味を持ったようである。趙同志に質問を始め、それを私が通訳することになった。

 「この塔(主体思想塔)に書いてある二つの文字は何か→主体でございます。」とか、「広場はどこにあるのか→この人民大学習堂の前でございます。」とか、「朝鮮にも桜があるのか。→お客様それは桜ではなく桃の花です。」といった内容で和やかに進行していたのだが、つ、ついに私が憂慮していた、しかし十分に起こりうる事態が現実化してしまった。「この三角の建物は何か?」という極めて遺憾な質問がそれである。私は一瞬「こっ、これはマズい!!」と思ったが、通訳に徹していたので、嬉しいような困ったような妙な高揚感を何とか抑えながらそまま通訳したところ、趙同志はためらうことなく「105階ホテルでございます」と涼しい顔で答えたのだった。ハレ?・・・105階ホテルって?

 言うまでもなくこの三角の建物というのは、いつ完成するとも知れず、コンクリート剥き出しのまま風雨に晒されるままになっている「柳京ホテル」 のことである。そのデカさゆえ平壌市内のどこからでも見える。あまり知られていないが順安空港からも見える。私なんぞ開城から戻ってあの威容が見えるとホッとしてしまうほどである。

 で、よーく見るとこの絵、柳京ホテルはすでに完成しているのである(現実の柳京ホテルはこちら)。全面ガラス張りの、ハルピンシンガポールホテルみたいなイメージだ。私は大連平壌館には何度も出入りしているが、これには気づかなかった。柳京ホテルは105階あるんで趙同志はナニゲに「105階ホテル」と言ったのだろうが、完成済みのこの絵には驚いてしまった。で、この絵、もう一箇所突っ込みどころがあるのである。


3.小さすぎるからなのです。

 万寿台の大記念碑。ここは観光客が必ず連れてこられて、巨大な金日成主席像におじぎをさせられるところである・・・なんて書いてある本もあるが、そうでもない。私の13回の訪朝歴の中で、連れていかれなかったことが2回ある。それから、あんでんだ的に言うとタガメの楽園でもあるのだが、まあそれはさておき、この絵、万寿台にあるはずの金日成主席の像がないのだ。両脇にあるべき赤旗を模したプロレタリアート像は確かに存在するが、中央の金日成主席の像は確かに存在しない。ヘンだ。この疑問を趙同志にぶつけたところ、「絵の中で首領様が小さくなってしまいます。だから書かないのです。」おおおおおっ!!ナイスな回答!!たしかに北朝鮮や文革期の中国では、現実にはあり得ない大きさでリーダーが書かれていることがある(これもそう)。しかし小さいと言ったって、絵の中で相対的に小さくなってるだけで、写実的に書くのはいいんじゃないかと思うんだけどなあ・・・・ってな理屈は革命的人民には通用しないんだろうな、このバヤイ。

(2004年10月28日訪問)

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