2008年春中国東北部北レス探しの旅

 「新しい北レスはどうやって探すのですか?」とはよく聞かれることだが、以前とは違って在住韓国人向けの情報紙に広告が掲載されるようになったり、中国のレストラン評価サイトにそれらしき名前が見えたり、なによりも現地在住日本人の方の情報提供が大きい。しかしこれまで北レス情報の少ない都市に自ら足を運び探し回るのもまた大切な北レス探しの手段。今回は4都市での北レス探しをご紹介する。
1.2008年3月遼寧省鞍山市北レス探しではよくあること

 鞍山市は遼寧省中部に位置する工業都市。2003年まで市電が走っていた。以前仕事でここを訪問したろでぃ同志から「北レスらしきレストランを目撃した。」との情報を得た私は北レス探しを敢行することにした。
日本料理「清水」の近くにあるとの情報を元に探し当てたのがこれ。店構えと雰囲気からして北レスではないと直感したが、中に入ったらやっぱし北レスではなかった。そもそも平壌で炭火焼肉など見たことがないが、それは置いとく。

店員に「ここに平壌から来た人はいませんか?」と聞いたら「この人何言ってんだろう?」ってな目で見られたが北レス探しの過程ではよくあることである。
上記平壌炭火焼烤から車で10分足らずの園林路沿いにある金剛山焼烤。ここもやっぱし北レスではなかった。昼食時に「ここで北朝鮮から来た人は働いていないか?」と聞いて食事もせずに帰っていくヘタな中国語を話す人(私のこと)を従業員はずっと目で追っていたが、北レス探しの過程ではよくあることである。
結局、鞍山では北レスは発見できなかった。てゆっかないんだろうと思う。そう思うことにして高速バスで街を離れた。バスに乗ったら新聞売りが乗り込んできて「台湾大学・台湾大学」と連呼していたがいったい何?

2.2008年3月吉林省吉林市/朝鮮族は集中しているが

 以前「ウンバンウル(中国名:鈴蘭花)」という北レス情報があった吉林市。今回宿をとった長春市からバスで向かった。吉林市を訪ねるのは7年ぶりくらいだが、長春に比べればコンパクトにまとまった小さな街である。吉林大街の東側に入ったあたりに朝鮮族が経営するお店の集中した地域がある。
「吉林市朝鮮族飯店」とハングル併記で書かれているが、その左側には「大冷麺」の文字も見える。 その中。午後1時という時間帯。冷麺メインの品揃え。昼からビールを飲んでいる客多し。瀋陽西塔の「西塔大冷麺」や延吉の「金達莱」によく似た雰囲気だ。
「リンゴの木」という名の韓国式お餅やさん。おシャレな看板だ。デザインも字体も韓国っぽい。 人参系のお店だろう。こういったお店がたくさん並んだエリアがある。
吉林市については「ウンバンウル」以外の情報はまったくなく、そのウンバンウルもどこにあるのかわかっていなかった。朝鮮族エリアを足を棒のようにして歩き回った私であったが、北レスは発見できなかった。このあと高速バスで吉林市を離れたが、バスに乗り込んできた新聞売りが鞍山に引き続いて「台湾大学、台湾大学」と連呼していたのを不思議に思っていたところ、「台湾大学」ではなく「台湾大選」であった(中国語ではナニゲに発音が似ている)。つまり目前に迫った台湾総統選挙の話題が掲載されているから買えと言うのである。う~ん、やっぱ中国語難しいわ。

3.2008年3月吉林省長春市/やっぱし一人勝ち

 仁風閣の一人勝ちの感が強い長春の北レス界であるが、他にも存在するのではないかとの情報があり、探してみることにした。このweb地図の「①平壌牡丹館」と「②平壌館」である。
①平壌牡丹館は南湖の北東岸で残骸を発見した。垂れ下がった幕が痛々しいが、左側に「平壌」の文字が認められる。 ②平壌館は早起きして勝利公園北側で探したがわからなかった。早朝太極拳を楽しんでいる現地の人に聞いてみても「知らない」という。もうないんだろうと思う。う~ん。これなんか店構えが北レスっぽいけどなあ。
ところでこれは長春空港から長春市内に向かう高速道路の途中で見られる看板である。「高句麗の古都-集安」の日本語が見られるのにおろろいてしまった。

2008年夏には長白山空港が完成してアクセスも飛躍的に良くなるだろうし、長春からも観光ルートが開通したというニュースもある。また中国と韓国が高句麗を巡ってモメているのもご存知のとおり。そういったいろんな要素が中・韓(朝)・日の三ヶ国語表記に走らせたのだろうと思った。


ところで「集安」でググると六つ目くらいに「めぐみリンク」が出てくるが集安と安めぐみはあんまし関係ない(なんのこっちゃ)。安めぐみ公式サイト
やはり長春は仁風閣の一人勝ちで他の北レスは淘汰されてしまったのだろうか?長春のweb地図は忠節橋同志からご提供いただきました。忠節橋同志に感謝します。

4.2008年3月遼寧省瀋陽市/北朝鮮っぽいビル発見

 北レスファンにはあまりにもお馴染みの瀋陽西塔。忠節橋同志の報告により「安山館」と「平壌友誼同明館二部」の存在が明らかになった(そのうちレポ掲載)。また非北レス化していた「アリラン」も再び平壌からの同志が入って再北レス化するなどの動きが見られる。

今回は瀋陽北駅周辺を歩いてみた。駅近くに「中韓大厦」という大きなビルがある。中に入ってみたが、特に面白いものがあるわけでもなく、ましてや北レスがあるわけでもなく、中国に進出している韓国企業のオフィスユースが中心のようである。真ん中の画像は韓国の銀行「ハナ銀行」の看板であるが、中国語表記の「韓亜銀行」を韓国語で発音すれば「ハナ銀行」になるのである。よくできている。
今回の瀋陽行きは瀋陽東駅を訪ねることも目的であった。
立派な門構えの瀋陽東駅であるが使用されていないようで、入り口には「御用の方はベルを鳴らしてください。」との表示があった。また「瀋陽市不可移動文物」とのパネルも掲示されていた。日本が満洲時代に建造した欧風建造物にも見えるこの巨大駅舎だが、実はそうではない。小牟田哲彦著「今でも乗れる昭和の鉄道」に詳しいので興味のある方はご一読を。
また、この瀋陽東駅は瀋陽北駅と229路バスで結ばれている。所要約30分。現役バリバリの北駅と使用されていない東駅が一本で結ばれていることはなんとなくうれしい。
一応の調査を終え瀋陽空港に向かおうとする私。タクシーで高速道路に乗ろうとしたその時、あっ、あれは?
ビルの最上部に「開発」というハングルが見える。タクシーの運転手さんが「あれは韓国の企業が建設しているのだ。」と説明してくれたが、なんだか北朝鮮っぽい光景だ。思いもかけぬロキロキである。右は2001年8月、中国集安から見た北朝鮮の恵山の建物。最上部に「主体」の文字が見える。こういったスローガンを掲げた建造物が北朝鮮では普通に見られる。「開発ビル」は韓国企業が中国でボクらこんなにがんばって開発してるんだよ~んという意味だろうか。韓国人は外国で存在感を示すのが好きだ。瀋陽市内から瀋陽空港に向かう途中、渾河大路の高速入り口「瀋陽站」の右側によく見える。
ところで忠節橋同志からこんな北レス疑い例の報告があった。青い看板に赤い文字で「名花園」と読める。色使いといいそのたたずまいといい、非常に北レスっぽい。大連にも同名の北レスがあるし。

この画像は2008年3月下旬、瀋陽西塔で撮影されたものであるが、5月の黄金週間に再度訪問した忠節橋同志によれば昼夜ともシャッターが降りており、営業している様子はなかった。シャッターが開いている時に中を見てみたが、飲食店風の内装ではあるものの、もぬけの殻といった感じであったとのこと。ただし改装直後という雰囲気だったそうであり、今後の展開が待たれる。

5.おまけ

2008年3月の訪問では瀋陽北駅から長春駅まで中国高速鉄路を利用した。

おおっ!!遠近法!!高速鉄路/和諧号の到着を待つ瀋陽北駅の服務員達である。「エンです。」「キンです。」「ホーです。」「三人そろってエンキンホーです!!」なんのこっちゃ。この和諧号、従来とは違って「軟座・硬座」ではなく「一等座車・二等座車」という呼び方をしているんだな。この切符を用意してくれたのは北朝鮮っぽいの好き長春駐在員であるが、この画像を見せたら「これって、私が買ってあげた切符の列車ですか?新幹線みたいですね。」とおろろいていた。なんだ知らなかったのか。ちなみにこの車両は日本製ではなく、フランスのアルストム社の技術で造られたものである。(2008年3月22日乗車)