足かけ2年金剛山歌劇団鑑賞記/オレって来賓だったの!?

 金剛山歌劇団は北朝鮮唯一の海外総合芸術団体。要するに総連系の在日のみなさんである。同歌劇団は毎年全国を回っており、現在30箇所の地方公演中である。私の住むA県A市にも毎年のようにやってきており、私も毎年通っている。民族舞踊と歌を中心とした公演は素晴らしい。

2005年公演/マエウリのお客様でございます

 市内のプレイガイドで前売り券を購入し、開演10分前に到着した私。入り口でもぎりの女性にチケットを渡すとその女性は一瞬驚愕の表情を浮かべ、私の顔を見るではないか。ど、どうしたんだろ。次の瞬間、その女性はホール入り口で待機していた男性に「マエウリのお客様で〜す。」と朝鮮語で告げると(マエウリの部分のみ日本語)、その男性は私のところにササッと歩み寄り、「こちらへどうぞ。」と、うやうやしく頭を下げるではないか。い、いったいどうしたんだ!?

 男性に導かれるままにホールに入ると、ほぼ中央部に「来賓」と書かれた席があり、そこへ座るよう言われた。ら、来賓?オレはただフツーに4,000円払って前売り券買っただけなのにどうして来賓の扱いなんだ?

 ほどなく場内は暗くなり、美しいチマチョゴリに身を包んだ女性がスポットライトを浴びながら「トンポヨロブン(同胞の皆さん)・・・」と朝鮮語であいさつを始めた。そして次に「本日は、ようこそおいでくださいました。」と日本語であいさつ。一斉に起きる大きなどよめき。「私達は、在日の歌劇団です。」でまたどよめき。ここにいる客は、金剛山歌劇団がどんな団体か知らないのか?さらに「この地での公演は47回目」、「歴史的北南首脳会談から5周年・・・」と言うたびにどよめきが聞こえてくる。

 なんとなくわかってきた。この公演に「マエウリ」を買ってくる客などほとんどいないんだろう。ではみんなどうやって・・・・?軽々には言えないが公演パンフに広告を掲載しているスポンサーにチケットを渡しているのでは?

 公演は創立50周年ということもあって気合の入った素晴らしいものだった。民俗音楽が主であったが、「農夫踊り」で見せたタップダンス、アメリカ曲「amazimg grace」、日本語曲の「涙そうそう」もヨかった。お馴染みの「臨津江」も歌われたが「イムジンガン」と、韓国風に発音していたのが印象的だった。

 向かって左が問題の(?)入場券。左上隅に「4,000円」って書いてあるでしょ?右がパンフレット。中は広告満載。公演終了後はロビーで歌劇団のCDや半島の食品を売っていたが、よく売れていたのは辛ラーメン(韓国農心社製)だった。
2006年公演/カネもないのにCDを買う

 1年後、「金剛山歌劇団実行委員会」から郵便物が。タダ券だった。そういえば前年の公演でアンケートに感想と住所を書いたのだった。なるほどこのようにタダ券を配っているのか。
 向かって左がそれ。昨年とは違い、「招待券」と書かれている。入場時、もぎりの女性が驚愕の表情を浮かべることも、思いがけず来賓待遇を受けることも当然なかった。2階の最前列に陣取った私だったが、今回の公演も良かった。特に印象に残ったのは2曲目の「フィッパラム=口笛」である。北レスで何度も聞いているが、やはり民俗楽器をバックにすると一味違うもんだ。女性独唱の「糸車の歌」とそれに続く日本語曲「おぼろ月夜」も感動的であった。

 この曲を歌ったのは全明華さん。終演後、ロビーでソロCD「ヤルラリ」を売っており、躊躇なく買った。またこの日、チャンセナプ(民俗管楽器)奏者、崔栄徳さんのソロCDの発売日とのことで、ご本人のサイン入りCDも買ってしまった。チャンセナプは金剛山歌劇団の聞かせどころとなっており、2002年度の公演ではNHK朝の連続テレビ小説「あすか」のテーマ「風笛」を披露している。オリジナルはオーボエであるが、民俗楽器だと一味違う。今年度招待券にもその姿が見える。そして看板ヴォーカリスト李栄守さんのオリジナル曲集「願い」、さらに昨年の創立50周年記念CD「飛躍」と、ドバイ帰りでカネもないのにCDで1万円使っちまったい!!まあいいってこったい!!

 ところで2005年の公演パンフは32枚にも及ぶ冊子(ほとんどが広告)であったが、2006年は、なんとA4版1枚を二つ折りにしたものになっていた。表紙、朝鮮語版演目、日本語版演目、後援会入会案内。これで全てである。広告など一つもない。1,300名収容可能の大ホールは立ち見まで出る盛況ぶりであったが、この人たちの何名が有料入場者なのだろう。そして広告収入もないとすれば・・・。

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