朴正煕大統領を探して(2) 大邱で反共ムードを追体験
|
|
1.閣下ゆかりの大邱へ
亀尾訪問を終え、次に向かったのは大邱である。韓国第4の大都市の割には観光で訪れる機会が乏しく、日本で例えると名古屋のような街と言えるだろうか。 しかし大邱は、閣下が進学した大邱師範学校(現在の慶北大学校)の所在地。あるいは令嬢・朴槿恵女史(前ハンナラ党代表)の出身地で、何かと閣下にはゆかりのある街なのだ。 亀尾からはムグンファ号で、大邱駅まで乗車した。ターミナル駅としてはKTXも停車する東大邱駅の方が有名で大きいのだが、市中心部からはやや外れる。この点は大阪駅と新大阪駅の関係に似ている。
慶北大学校は大邱駅の北にあるが、歩いて行くにはやや遠く、訪れたとしても閣下ゆかりのものは特にない模様。朴槿恵女史の生家でもあればとも思ったが、あれこれ調べたもののよくわからない。ちなみに大邱は盧泰愚元大統領の出身地でもあり、その生家は(放置状態ながら)残されているが、これは市街地からかなり離れたところにあるのでやはりパス。 そんなこんなで今回、足を運んだのは市街地の南側に位置する「アプ山公園」である。地下鉄顕忠路駅を下車、急勾配の坂道を登るとさらに山道……大邱は名古屋と同じく高温多湿の街なので余計にしんどい。素直にバスに乗ればよかった(地下鉄中央路駅から410番のバスに乗るとアプ山公園に直行する)。
|
|
|
大邱駅は一見巨大に見えるが、建物のほとんどはロッテ百貨店。駅自体は2階にこぢんまりと存在している。 ちなみに、2003年発生の地下鉄放火事件の舞台は大邱駅の次にある中央路駅。不謹慎ながら興味本位で訪ねてみたが、美しく整備されていて痕跡は一切なかった。 |
アプ山公園自体は景勝地なのだが、私の目的は山麓にある「洛東江勝戦記念館」。ここまでたどり着くのに何十分山道を歩いたことやら。 記念館前では朝鮮戦争時の韓国軍の戦車・戦闘機などが野外展示されている。 |
|
|
おおおっ!革命チックな銅像を発見。「学徒義勇軍6.25戦争(朝鮮戦争)記念碑」だが、平壌にある祖国解放戦争勝利記念館前の銅像と雰囲気が似ている。 |
入口には北の核兵器に反対する署名簿が置かれている。 南北融和なんか糞食らえ的にのっけから反共ムードいっぱい、何かわくわくしてきた。
|
|
アプ山公園内にある「洛東江勝戦(戦勝)記念館」は、朝鮮戦争関連の資料館。人民軍の南侵時、大邱は最前線だったが、結局北の手に陥ることなく休戦を迎えた。このため、アプ山の麓にこのような施設が設けられたわけである。プチ「祖国解放戦争勝利記念館」といったところか? この記念館、着工が1978年3月で竣工が1979年5月と、時期的に閣下の執権末期と重なる。そして館内は反共ムード色濃い1970年代韓国の雰囲気を残す、(趣味者的には)貴重な施設となっている。朝鮮戦争で武勲を立てた閣下に敬意を表しつつ、では、いざ展示へ……!
|
|
2.反共の殿堂で微笑む将軍様
この展示館は2階建だが、2階は近現代韓国史に関する写真パネルがひたすら飾られているだけの無味乾燥な展示なので、特に見学する価値はない(この方面に興味のある方は天安の独立記念館を訪問されたい)。 1階の入口は南侵トンネルを再現した不気味な雰囲気となっている。で、トンネルを抜けるとそこは……期待にたがわぬ反共の殿堂だった。
|
|
|
いきなり「金日成の正体を暴露する」「独裁政権確立」のパネルが! この先も開館当時から変わっていないと思われる北非難のパネルが続き、非常に興味深い。 |
これは1965年、金日成主席がインドネシアを訪問した際の写真。肌も露わな現地女性をうっとり見つめる首領様の表情が微笑ましい。 こういう写真をわざわざチョイスする底意地の悪さは、やはり1970年代韓国のセンスである。 |
|
|
ガラスケースが左右に仕切られ、左が「北韓文物」右が「国産品」となっている。北の工業の低水準ぶりを強調するいやらしい展示っぷり!!中の製品自体は比較的新しかったが、センスはやはり1970年代のそれである。 |
館内には北の製品が多々展示されているが、ほとんどが1970~80年代頃の古めかしいもの。だが、中には北製ブランデー(画像左下)のように珍しい品もあって、趣味者的には目が離せない。 |
|
|
真面目な話をすると、中には研究者的にも本当に貴重な品があったりする。画像は北朝鮮労働党(朝鮮労働党の前身)党員証の現物。こんな珍しい資料、ソウルでも見たことがない。 |
ありゃりゃ……最後の最後になって日和った展示パネルが二面ほど登場。「民族共栄」云々とあるが、それまでの展示内容と全く整合性がない。 |
|
昨年、仁川上陸作戦記念館を訪れた際、最後の最後で南北首脳会談の展示が出てきて拍子抜けさせられたのを覚えているが、この記念館でもやはりとってつけたように北の将軍様の笑顔が現れた。時代の流れには逆らえないということかも知れないが、そこに至る展示はやはり反共ムードてんこもり。往年の韓国の雰囲気を追体験するには十分な内容である。上では触れなかったが、もちろん朝鮮戦争に関する展示も多い。 しかも入場料は無料。基本的には観光客相手ではなく、例えば学校単位で集団で見学するような施設なのだろう。だが、今時の韓国の小中学生はこんな展示を見て納得するのかと言えば、それはそれで疑問なのだけれども。
|
(1)亀尾編に戻る (3)ソウル編に進む
|