ホテルでロキロキ/高麗ホテルは韓国にも存在した!!
 高麗ホテル・・・我々北マニアをロキッとさせる名前である。1987年の日本人北朝鮮観光解禁以来使用されてきたこの平壌高麗ホテルは1985年8月竣工。45階建てのツインタワーである(この部分「朝鮮−魅力の旅」朝鮮新報社出版局より)。小泉元首相の訪朝時はプレスセンターが設けられたことでも知られる。この高麗ホテルは衛星放送が見られるようになっており、NHKも視聴可能である。

 ネットでダラダラと北朝鮮情報を収集していた時、韓国にも同じ名前のホテルがあることを偶然に知った私は年末の海外旅行に迷わず韓国を指名。絶対に宿泊しようと心に決めていた。同じ名前を名乗っているのなら、必ずや何らかの革命的な共通点があるはず(ないって)。そしてついにその時はやって来たのである。
1.いざ高麗ホテルへ。偉大なのは屋台のオバさん
 韓国の高麗ホテルはソウル市と仁川市に挟まれた富川市に存在する。高麗ホテル公式サイトによると、高麗ホテルの最寄り駅は地下鉄1号線の松内(ソンネ)駅。ここから90−1番バスでホームプラス下車とある。自分で言うのもなんだが、旅慣れた私といえども市内バスは緊張する。基本的に旅行者のために存在するわけではないので外国人観光客に対する対する配慮がないからである。

 車内放送を聞き漏らすまいと緊張した私を乗せたバスは松内駅前を出発。小刻みに停車を繰り返し、ホームプラスバス停に無事到着。10分弱の乗車時間である。ちなみにホームプラスとはサムソンが経営する大規模ショッピングモールのことであるが、目指す高麗ホテルはなかなか見つからず、「もっと高速道路よりにあるよ。」と愛想のよい屋台のおばさんに教えてもらって、ようやくホテルのあるエリアに到着した(ちなみに韓国の屋台のおばさんはほぼ例外なく愛想がよく親切である)。

おおおおっ!!ってここでロキロキしたのは勇み足。左の画像は偶然出くわしたツインタワーで、高麗ホテルとは関係ない。右の画像が平壌高麗ホテルであるが、高麗ホテル=ツインタワーというイメージが私をロキッ!!とさせたのだった。

やっと着いた。左が今回宿泊した富川高麗ホテル。右が平壌高麗ホテル(私が1987年撮影)。富川高麗ホテルには誇らしげに旗が翻えっている。朝鮮民主主義人民共和国の旗を探したがやっぱしなかった。

高麗ホテルは地上15階、地下3階の堂々たる建物である。2004年11月30日開業。1室しかないという最高級のプレジデンシャルルーム(偉大な方が泊まるものと推測される)を筆頭に総客室数127。フロントに掲げられた世界時計は東京・パリ・ニューヨークといったもので、意外にもモスクワや北京ではなかった。右が室内。部屋の中をよ〜く見回したが、偉大な方の肖像画はなかった。


2.やはり革命的な高麗ホテル

休憩したところでプチ館内探索へ。
左は1階の入り口とフロント近く。サボテンが飾られている。乾燥地帯でたくましく生き抜くサボテンに主体革命偉業を成し遂げようとする人民の精神を象徴させたものと理解。右は2階のライブカフェレストラン。夜な夜なチマチョゴリの同志達が「パンガプスムニダー」と現れ30分くらいの華麗なステージを披露。K-oyajiが花束を渡したりなんかしちゃったりするものと勝手に理解。
エレベーターに高麗ホテルのシンボルマークが。伸び行く朝鮮式社会主義の優秀性を上半分で表し、下半分は大同江の流れに朝鮮の豊かな自然を象徴させているものと解釈。エレベーターの中にはこんな表記が。「14・15階の特室をご利用になるお客様は右側の“Card Here”に客室カードをかざせば自動的に上昇します。」おおおっ。さすが高麗ホテル、いついかなる時、偉大な方がお見えになっても準備オッケーだ。敬愛する偉大なお方のために恒常準備!!
 やがて日が落ち、外出することにした。この高麗ホテル、驚くべきことに外出は自由である。案内員の許可を得る必要もない。てゆっかもともと案内員などいない。ちなみに平壌高麗ホテルも外出は自由であるが、親切な案内員同志がずっとついてきてくれるのである。街に出てみると・・・
富川市の“ホームプラス”を中心としたエリアは、ハデハデネオンきらめく歓楽街だったのだ。左のビルなどこれだけで平壌の電力を全部消費してしまいそうなハデハデアーンド電力浪費ぶりである。そして中の画像、「オンナサマだ」って何だ?オレは最初女性団体が「女様だ。何か文句あっか?」と和田アキ子調にいばっているのかと思ったがよく見ると「サマだ」ではなく「マサだ」である。この状況から考えて、惜しくも倒産した出版社、「ザマサダ」との関連性も低いと思われる。で、同じものを別角度から見てみると(右の画像)・・・ハングルで「男性専用」と書かれている。なるほろ。「オンナマッサージ」と書きたかったのだろう。「だ」と「ジ」。似ているのは濁点だけのような気もするが。それから日本人相手なら「女大生」ではなく「女子大生」だと誰か教えてやってくれ。

オンナマサだの誘惑を辛うじて振り切り、コンビニでビールを買ってホテルに戻ることにした。
おおおっ!!闇に浮かぶ高麗ホテル。とっても北朝鮮っぽい。やっぱりこうでなくちゃ。“ぼわーっと闇に浮かぶいろんなもの”が北朝鮮の夜のイメージだからだ。高麗ホテルは独特のライトアップをしている。この照明は朝6時まで続いていた。

朝食は平壌高麗ホテルのようにチマチョゴリ美女がレストランの入り口で案内してくれたり、おかゆを入れてくれたりすることはなく完全セルフサービスだったが充実していた。キムチおいしかった。
この日は朝から月尾島、南大門、国立墓地(広い!!)と歩き回ってやや疲れ気味であったがこの高麗ホテルに宿泊してなんだか革命的に元気が出てきた。部屋のお風呂がジェットバスなのもポイント高い。いや〜やっぱし高麗ホテルは革命的だったな。うん。ナニ?ムリがあるって!?

【最後に】聡明なる「北朝鮮っぽいの好き」読者の皆様方はとっくにお気づきと思うが、当然ながら富川高麗ホテルと平壌高麗ホテルは何の関係もない。ギャグをギャグであると説明するのは心苦しいのだが、くれぐれも勘違いなされぬようお願いしたい。

 富川高麗ホテルは観光客よりもビジネス客や地元の結婚式に重点を置いているような印象を受けた。冷蔵庫にはミネラル2本しか入っておらず、ルームサービスもないが、すぐ近くにコンビニも食堂もいくらでもあるので不便は全くない。一泊して108,900ウォン。円高の時期だったのでお得感があった。これまで帰国便が朝早い場合はAREX(空港鉄道)雲西駅近くの空港新都心の安宿を確保することが多かったが、高速道路の中洞インターがすぐ近くにあり、仁川国際空港まで車で30分というこの高麗ホテルもよいだろう。

 高麗ホテルの英語名だが館内の掲示物や印刷物により「THE KORYO HOTEL」「HOTEL KORYO」「KORYO TOURIST HOTEL」と3種類あったのはケンンチャナヨってことでひとつ。(2008年12月28日宿泊)