長春仁風閣を考える〜仁風閣は正しい北レスか?
長春に突如として出現した大規模北レス「仁風閣」。04年5月に初めて訪問したが、これまでの北レスとは違って妙に接客が上品というか大人しい印象が強かった。三ヶ月経過した同年8月、再訪してその後の仁風閣を調査することにした。
1)どうしてこんなに混んでるんだ!?
8月10日午後6時10分、私は「北朝鮮っぽいの好き長春駐在員」と共に仁風閣を訪れた。そしたらなんと広い店内は満員で、順番待ちの状態であった。仁風閣は北レスとしては最大規模で、同社の広告によれば最大1,000名収容可能とのことである。それが午後6時10分に満員ってどゆこと!?入口のチマチョゴリ姿の服務員に「毎日こんなに混んでいるのか?」と聞いたら「そうだ。」という。すでに順番待ちの客も多く、この日は諦めて必勝客に行くことにした。
「北朝鮮っぽいの好き長春駐在員」は朝鮮族なのだが、最近の朝鮮族はキムチよりもピザやフライドチキンといったものの方が好きみたいだ。それに私がピザにタバスコをバシバシかけていると、「あんまり辛くするな。」怒られてしまった。朝鮮族に辛いもの食うなと叱られるとは思ってもみなかった。
仁風閣では翌日の予約をしておいたが、それも午後5時10分に来てくれという。予約番号が与えられたが20番・・・ってことはもう先に19組いるってことなのか?
2)こりゃひょっとするとラッキーかも?
翌日指定された5時10分に行くと、やっぱり満員だった。いくらなんでも早いんじゃないかと思うんだが、服務員同志に聞くと「毎日こうだ。」という。ちなみに入口付近にいるチマリョゴリ姿の女性達は漢族の方が多いが、朝鮮人接待員同志との見分け方は簡単で、バッジをつけているかどうかである。
ところが空くはずの座席の客がまだ帰らないのでちょっと待てという。おいおい。でもまあ待ち席がステージの真正面なのでかえってよかった。仁風閣ではその構造上、食事しながら直接歌う姿を見ることができない場合が多いのでこれはラッキーである。
北レスは公演時間が決まっていることが多いのだが、仁風閣では常に音楽が流れている。それも民族楽器やピアノの伴奏が多い(下記画像参照)。ギターを抱えた黄色い民族衣装をまとった女性が歌っているのは、なんと愛国歌(北朝鮮国歌)である!!
3)とてもご案内できません
私は仕事柄、中国の地方政府の役人とのお付き合いがあるのだが、彼らが外国からのお客さんを接待する時に欠かせないのが“宴会”である。もてなすのが主眼であるからして、それなりの格式のあるレストランに通されることが多い。
以前私は宴会の場として、吉林省政府に北レスを提案したことがあったが(スマン公私混同で)、「あんなところにはとてもご案内できません。」という反応であった。つまり格式の面で問題があるということだろう。確かに北レスはそれほど高級店というイメージではない。でも私はそこが好きなのだが。
ところが今回、驚いたことに仁風閣で「とてもご案内できません。」と言った当の本人にバッタリ会ってしまった。お客さんと一緒だった。また、別の吉林省政府の役人とも偶然に会ってしまった。つまり仁風閣はすでに「高級店」としてのステータスを獲得しているということか。
たしかにここは店構えが立派で大規模であり、料理もおいしい。キムチは北朝鮮によく見られるような水分の多いものではないし、犬肉料理も充実している。私はナベもの以外の犬肉料理はあまり好きではなかったのだが、ここの「醤狗小腿」はおいしかった(下記画像参照)。なんだか子供の頃の手塚漫画に出て来た「肉」を思い出させるイイ形をしている。
右二つは店内で配られるティッシュペーパーを広げたもの。大型婚礼やお誕生会にどうぞ。最大1000名(!!)収容可能と書かれている。うーん。やっぱしデカいわ。
4)正しい北レスの在り方とは?
生前の横山やすしが、「大阪ではタコ焼きに一つでもタコが入っていないと、翌日からその屋台の売り上げは半分になる。」と発言したことがある。中国人もそれに近いものがあり、安くて美味しくないとあっという間に見放される。仁風閣はそんな厳しい中国人のお眼鏡にかなったということなのだろう。
3ヶ月前の訪問時は写真を撮ろうとすると渋っていたものだが、今回はそんなこともなくなったし、漢族服務員の接客態度も改善されていた。北朝鮮から来た接待員同志は20名もいるそうだが(これも北レス最大級)、少しづつ中国語を覚えてきたようで、注文を取りに来る姿も見られた。
ただし他店のように気軽に接待員同志とお話したり、時にはデュエットしたり・・・といった雰囲気ではない。私はそういった雰囲気の方が好きなんだが、
仁風閣は北レスとしては独自の道を歩んでいる。そして確実に長春市民に受け入れられている。北レスに正しい在り方などないのだ。それぞれがそれぞれのやり方で頑張っている。これでいいのだ。バカボンのパパなのだ。 (2004.8.10訪問)
チとマニアックにグッズ(というのか?)なんぞ紹介する。左端は箸入れ。中央がスプーンカバー。
右端は地元フリーペーパーで発見した仁風閣の広告。調理師を募集している。初心者はダメよとある。即戦力が欲しいのだろう。やはり儲かっているんだな。