ムかれて新年快楽で雪山賛歌でハッピーバースデー!!〜瀋陽東妙香山訪問記

1.一人で来てもいいんですよ

 私は2005年の大晦日を長春で過ごした。一緒に紅白歌合戦を見ていた中国朝鮮族が、ユーミンと一緒に歌っていた韓国のイム・ヒョンジュを見て「どうしてこの男性はこんなに色白で肌がきれいなのか?」ときいてきたが、そんなこた知らん(笑)。

 翌日、バスで2年ぶりの瀋陽に向かった。私は大連と長春は年4回程度行っているが、瀋陽はすっ飛ばしてしまうことが多い。それで2年ぶりの訪問なのだが、北レス分布図がどう変わったのか、新規開店はあるのかなど到着前からロキロキしっぱなしであった。

 夕方4時に瀋陽の著名なコリアタウンである西塔に到着した私は、このまま北レスで食事をすべく品定めを始めた。とりあえずは全店ちょっと中を覗いてお店の名刺もらって、北カフェで柚子茶でも飲みながら選考作業・・・と考えていたのだが、最初に顔を出した東妙香山で応対してくれたピンクのチマチョゴリの同志がとても愛想がよく、名刺だけもらって帰ろうとする私に「今日はお食事されないのですか?お客様」と言うので「う〜ん。じゃあ6時くらいに来るよ。」と答えてしまった。「それではお待ちしています。」という彼女に「一人で来てもいいの?」と問いかけると「もちろんですともお客様。」というので、事実上この瞬間、夕食は東妙香山に決定してしまった。

 その後、平壌館、牡丹館、妙香山も回ったが、やはり東妙香山が一番愛想がよかった。宿泊した七宝山ホテルにも北レスが2軒入っているが、ホテルで食事するつもりはハナからなかった。

お店の外観。マル印の中の「東」の文字がなんとなくお茶目だ。同じ西塔にある「東」がつかない方の妙香山とは経営者も違い、直接は関係ない模様。山本海苔店と山本山のような関係なのだろうか。右が主に接待してくれた朴同志。ややポッチャリ系の明るい性格の同志だ。やっぱり北レスは明るくなくっちゃあ。

2.カスでなくハイトでいいですか

 この東妙香山、1階は喫茶部になっていて、2階が北レスになっているのである。実は2年前の訪問時、1階の喫茶部でお茶を飲み、店内で見られる朝鮮中央放送をロキロキしながら見ていたってことがあるのだが、今回も立ち寄ってみることにした。 

 長居するつもりはなかったので入り口近くの席につこうとしたら、奥のゆったりとした所に座るように言われた。親切。メニューに目を落とすと「カスビール」の文字が。おおおっ!!これは韓国製のCASSビールのことだな。最近は韓国製品を出す北レスにも免疫ができてきたが、やはりロキロキするもんだ。迷わずこれを注文。緑のチマチョゴリの女性は一旦奥に引っ込むとすぐ戻ってきて「カスを切らしているのでハイトでいいですか?」と言う。ハイトって、あーたそれは同じく韓国ビールの「HITE」のことか!?なんかオレの嗜好をわかっててわざとやってないか(笑)。

 ほどなくハイトを運んできたさっきの緑のチマチョゴリの女性、北レスのわりにはやや態度が硬いと感じていたのだが、つまみとして注文したミョンテ(スケトウダラ)の干物をテーブルに置くと「お客様、ミョンテをお召し上がりになるのは初めてですか?」というので、何かいいことありそうだと直感した私は「うん。初めて」と答えた。実は延辺で何度も食べたことがあるのでウソなんだが、その女性は「それでは私がムイてさしあげます。」と言い、いきなりミョンテを手に取ると、ムキムキと皮をムき始めたではないか。やっぱしいいことあった。ウソもたまにはついてみるもんだ。

 その緑のチマチョゴリの女性はムきながら「わが国ではよく食べるんですよ。」「私の父も大好きです。」などと教えてくれた。さきほどの硬いイメージなど吹っ飛んでしまった。やはり来てよかった。ムいてくれたしな。ここを訪問する北レスファンの同志達よ。キミたちも是非ムいてもらってくれたまえ。
1階喫茶部の店内。これは2004年元日に撮影したものだが、今でもレイアウトは変わっていない。テレビで流れているのは朝鮮中央放送。右がミョンテ。2階食堂部で注文したものをお持ち帰り用にしてもらったのである。こうして尾頭つきで包んでくれるのである。朴同志の手によって完〜っ全にムかれた後である。完〜っ全にである。
3.お客様は青年でいらっしゃいますか?

 6時に2階北レス部を訪問すると先ほどの朴同志が「お待ちしておりました。」と言いながら笑顔で迎えてくれた。まだ時間が早いせいか、他には二組程度の客がいるだけだったが、時間を経るに従い、どんどん席が埋まってきた。

 私はここで食事するのは初めてだったのだが、見たところ16卓で中規模北レスといえる。その割には同志達の数が多いような気がしたので朴同志に人数を問うと、「10名でございます。」とのこと。ちなみに1階の喫茶部は3名。16卓に対して10名だったら密度高いよな。この他に責任者と思われる40代くらいの女性もいたし(この女性もニコニコと愛想よかった)。事実、けっこう席が埋まっていたにも関わらず、この朴同志は最後までほぼつきっきりでご奉仕してくれた。

 朴同志とは仲良くお話できたのだが、「お客様は日本人なのに朝鮮語をお話になるということは、総連の方ですか?」と聞かれたとき、「総連」が「青年」に聞こえてしょうがなかった(発音が似ている)。たしかに私はトシより若く見られることが多いのだが、この程度の聞き分けができなくてはハングル検定、上に行けないな。でも全員平壌商科大学出身とか、朴同志のトシとか聞けたしよかった。面白い客が来ているってことが店内に伝わったのか、朴同志の他にもいろんな同志が立ち替わり入れ替わりやってきたが、瀋陽では朝鮮語話す日本人ってそんなに珍しいんだろうか?

4.パンガプスムニダは新年快楽だった

 公演は7時半から。朴同志の出番は後の方だったらしく、ステージに向かう気配はない。それどころか写真撮りたかったら一番前に行って撮れと言う。たまたま一番前の席が空いていたのだが、私は朴同志のおかげで特等席でこの日の公演の一部始終を目撃することができたのであった。

 一曲目はお馴染みの「パンガプスムニダ」だが、途中朴同志が「ここの部分、なんと言っているかおわかりですか?」と言うので「う〜ん・・・ちょっと歌詞が違うような気がするんだけど。」と答えると、「そうです。一部中国語に変えているのです。」と言う。

 おお!!確かにそうだ。通常「パ〜ンガプスムニダ〜パンガプス〜ムニダ〜」と歌うべきところを中国語で「新年快楽〜新年快楽〜」と歌っている。この日の公演は元日ヴァージョンだったのだ!!そして2曲目、私はまたまたおろろいてしまった。中国には「新年快楽」という新年を祝う歌があるが、なんとこの歌、日本では「雪山賛歌」として知られている。元がアメリカ民謡らしいのだが、お国によって全く歌詞の内容が違うのである。中国語ヴァージョンはここで見られる(音つき注意)。

 この曲の「新年好〔口牙〕新年好〔口牙〕祝福大家新年好」の部分が「雪よ岩よ我らが宿り」に相当するのだが、ここ瀋陽東妙香山ではさらにそれを朝鮮語の歌詞に変えて「チュッカヘ〜ヨ、チュッカヘ〜ヨ、セヘチュッカ〜ハムニダ〜」と歌いながら、客席を握手して回るのだった。当然私も握手してもらった。またこの日が誕生日だという誠におめでたい客のために、「英語でhappy birthday to youを歌ってあげるサービス」さえあっておろろかされたのだった。
公演の様子。この二人はこの後ステージを降りて握手して回ったのだった。右の同志のベース弾きながらのアリランは、はなわ真っ青!!だれか「佐賀県」教えてやってくれ!!伝説の男〜ビバ・ガッツでもいいぞ!!

5.お客さんって、北レス系?

 ずっと接待してくれた朴同志以外に印象に残ったのが宋同志である。この同志はチョー美人というワケではないが、独特の茫洋とした雰囲気を持っている。私の北レス取材ノートを見せてあげたり、私の北レス遍歴を話してあげたりして楽しく過ごした。

宋同志「お客さんってー、いろんな北レス行ってるんだね。」←この独特のタメぐち口調はかなり意訳入ってます。
あんでんだ「そう。趣味だからね。」
宋「てゆっか北レス系の人?」
あんでんだ「そう。いろんな北レス行ったよ。」
宋同志「てゆっか朝鮮語でパラムドゥンイって知ってる?」
あんでんだ「いや知らない。どういう意味?」
宋同志「ふふ。英語で言うとplayboyだよ。」

ドキッ!!鋭いっ!!けっこう本質突いてるかもしんない。宋同志はなかなかに多才で電子ピアノに扇子の舞に大活躍であった。
ほれ。そうでしょ。右は私の北レス取材ノートに新年のお祝いメッセージを書き込む宋同志。「新年の初日を迎えてチョーうれしっス!」と書かれていた。「!」がハートマークとビックラゲーションマークの中間のような形で可愛らしかった。

6.五月にマンナプシダ

 2年前の正月、瀋陽金剛山で食事したとき、満腹と戦った経験のある私であるが、この日もお正月ということでトックク(シンプルなお雑煮みたいなカンジ)やお餅がタダで出てきた。トッククについては気を利かせた朴同志が「温め直しましょうか?」と言っては奥に持っていくのだが、帰ってくると温かくなっただけじゃなくて量、増えてないか?どう見ても増えてるぞこれ。そういうわけで元日、ここでは理論上はタダで食事できる。でもホントにやらないように。
正月なんでサービスで出てきたお餅。酒は主にハイネケンを飲んだが、満腹感を感じてきたあたりから朝鮮酒に切り替えた。「山参酒」。内臓にグッときく酒である。おみやげになんと北朝鮮直輸入のカレンダーをくれた!!嬉しー!!朝鮮美人が毎月民族服にバッジ付きで登場するこのカレンダー、当然ながら2月16日と4月15日はフチどりのある違う字体で書かれているのである。インリン・オブ・ジョイトイのカレンダー買おうかどうか迷っていたこのオレだが、買わなくてよかった。最後に朴同志と記念撮影。この花束は本来公演中の同志達に渡すべきもので、30元とられるのだが、この時は撮影用に貸してもらったのだ。でもひょっとすると課金されてたか?でもあんなに楽しかったんだからいいや。

 帰りには出口まで同志達3人が送ってくれた。「次回はいつお見えになりますか?」というので酔った勢いで「5月に来るよ。」と言ってしまった。5月かあ・・・GWの最大の問題点は正月やお盆休みとは違って直前にボーナスがないことなんだよなあ。でもまたムかれたいしなあ。
                                        (2006年1月1日訪問)

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