トルクメニスタン旅行記(12) さらばトルクメニスタン。そのうちまた。
トルクメニスタン東部の街、トルクメナバットに到着した私は専用車でウズベキスタン国境目指して走り続けた。

33.初めてだこんなイスラム体験は   
 車は順調に国境に近づいてゆく。40分ほど走ったところでモスクが見えてきた。男性ガイドが「あそこにイスラムのコミュニティがあるので行ってみましょう。」と言う。そういえば今日は金曜日。イスラムの休日である。
 
このようにイスラム信者が集まってお茶を飲みながら楽しそうに語らっている。しかし決して男女が同席することはない。よく見ると男性が奥の半分、女性が手前の半分に座っていることがわかる。 リーダーは質素な家(一部屋しかない)に住み、イスラムの教義に従って暮らしているのだそうだ。許可を得て写真を1枚撮らせていただいた。
 日本で暮らしているとイスラムの生の姿に触れることはまずない。私はこれまでインドネシア、U.A.E、ウズベキスタンといったイスラム国を旅してきたが、アバヤで全身を隠した女性を遠巻きに見たり、モスクから流れるアザーンの響きを美しいと感じたり、モスクを観光地として眺めたりすることはあっても、実際にイスラムのコミュニティに入り込むことはなかった。

 この男性ガイドは敬虔なイスラム教徒であり、6歳の子供と共に“私の旅が順調に進みますように、そして私のこれからに幸福がありますように”とアッラーの神に祈りを捧げてくれた。僅か6歳の子供が、父と全く同じポーズ、全く同じお祈りの言葉を捧げていることに心打たれた。

  ありがたいお祈りではあったが、日本に戻ってすぐ車をガードレールにぶつけたり、掲示板の書き込みを全部消してしまったりと今んとこロクなことがない。しかしお祈りの効果にはタイムラグがあるのだと信じたい。なにより初めて会った旅人に祈りを捧げてくれるという姿勢がうれしい。

 このコミュニティのリーダーともガイドを通して少し話したが、彼らは日本人はみな仏教徒であり、しかも熱心に前向きに仏の教えを信じているものだと思いこんでいるようだ。私は葬式の時はお寺さんに頼るが事実上無宗教である。しかし彼らにとって、宗教を拠り所にせず生きている人などその存在自体信じられないものなのだと思う。
  
 ここではお茶とイスラム菓子をごちそうになり、30分ほど滞在して再び国境へと向かった。気づくとあたりは一面の綿花畑である。



34.さらばトルクメニスタン。毒蛇出ないでくれ。

 いよいよ国境が近くなってきた。綿花畑は消え、荒地が広がっている。6歳の子供が「このあたりは毒ヘビが出るヨ。」と言うのでにわかにビビってしまった。たしかにシャシャシャと文字通り蛇行しながら赤い舌をチロチロ出しつつヘビが出そうな雰囲気ではある。しかしガイドさんが「ヘビはよく出ます。しかしヘビは本来おとなしい生き物で、挑発しない限り襲ってくることなどないのです。」と言う。

 車は越境地点のFarapに到着した。ここでかわいい6歳の子供から贈り物があるという。トルクメニスタンのミニ国旗。うれしいプレゼントだ。短時間ながら貴重な経験をさせてくれたガイド氏ともここでお別れ。

 ダショウズ入国時にガイドさんからもらった書類を提出し、パスポートに出国印を押してもらって無事トルクメニスタンを後にすることができた。ウズベキスタン側までガイドさんは緩衝地帯が約1キロあると言っていた(実際はもっとあったように感じた)。事前の情報では徒歩移動は許されず、小型バスに乗せられるとなっていたが、実際にはバスはなく徒歩なのだという。
   
Farap越境地点の手前。この突き当たりに出国検査所がある。順番待ちのトラックが列を作っている。  緩衝地帯。この道を延々と歩く。日本ではできない経験だ。毒ヘビが道を横切ることもなく、やがてウズベキスタン側Olot越境地点に到着。 

 ウズベキスタン入国審査は時間こそかかったが問題なく終わり、Olot越境地点から外に出た。すると金髪に青い目をした現地人女性が流暢な日本語で「お疲れ様でした。」と声をかけてくる。「皆様無事にいらっしゃってますか?」・・・どうやら他の客と勘違いしているようである。普段は観光ガイドでなく通訳をしているというにこやかなこの女性は、私と同じルートでやってくる団体客を待っており、私がその内で一番早く出てきたと思ったのだ。

 「トルクメニスタン側で14名の団体客を見かけませんでしたか?」と聞かれたが見なかった。もっとも私が午後イチで出国したので、後で来るのだとは思うが。それにしてもこの緩衝地帯、14名もいれば大きな荷物を抱えた人もいるだろうに、ずっとゴロゴロしてくるのは大変な労力だろうと思う。

 笑顔がかわいらしい彼女と別れるのはちょっと惜しかったが、私には手配済みのドライバーさんが迎えに来ておりここでお別れすることにした。ただし彼女とはこのあとウズベキスタン国内で3回も偶然に会うことになるのだが。

 3泊4日のトルクメニスタン旅行はこうして幕を閉じた。次回からはトルクメニスタンで買い求めた図書や資料を紹介しながらトルクメニスタンはどれくらい北朝鮮っぽいのか考えてみたい。
 
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