トルクメニスタン旅行記(15) 結局北朝鮮っぽいのかトルクメニスタンは?
 トルクメニスタンを語るとき、必ずといって引き合いに出されるのがニヤゾフ前大統領の信じ難い政策の数々である。詳しくはwikipediaの「サパルムヤト・ニヤゾフ」の項の「政策」に詳しい(各自検索されたし)。「いくらなんでも・・・」と思わせるものが多いが、世の中には想像を超える出来事が往々にして起きるものである。ニヤゾフからベルディムハメドフ体制に移行した現在のトルクメニスタンでもこういった信じ難い政策の数々が残っているのだろうか?

36.ホントなのかおバカな政策の数々は
  三日間の滞在ではニヤゾフ前大統領の施行したおバカ政策について全てチェックするなどということはとてもムリ。しかしナターシャとの対話の中で以下の点はとりあえずプチ確認できた。

(1)オレ「首都以外の病院は全て廃止されたってホント?」→ナターシャ「地方にも病院はありますよ。でも大病だったら首都に来るでしょうね。」 ※まあフツーだな。わが国でもそうだし。

(2)オレ「ルーフナーマを読むのは国民の義務なの?」→ナターシャ「義務ではありません。」 ※以前は義務だったのかもしれないが、今回の旅行ではその威光に翳りが見られたのはレポしたとおり。

(3)アシュガバット観光を始める時 ナターシャ「streetではsmokeは・・・」→オレ「あ、オレno smokeだから。」 ※うー。これナターシャの質問を最後まで聞くべきだったなあ。完全禁煙国家という情報があったのだが、ナターシャは「streetでは・・・」って限定していたもんなあ。残念。

また実際に目撃したこととしては・・・

(4)金歯は禁止→ウズベキスタンからトルクメニスタンに入国した際、これ以上ないという、漫画に出てくる成金のようなキンキラキンの金歯の人を見た。 ※ただこれは隣国から入国してきた人だったのかもしれない。

 本当はもっといろいろナターシャに聞いてみたかったのだ。上記(1)〜(3)はニヤゾフ前大統領の信じ難い政策について取り立てて話題にしたわけではなく、普通の話の流れの中で確認したものだ。おバカ政策については、たとえそれが真実であってもトルクメニスタンをバカにしているとナターシャに誤解されるのが怖かったのだ。皆さんも可愛い女性には嫌われたくないでしょ?

 ただ二代目の時代になって2年以上が経過したトルクメニスタン。ニヤゾフ離れが進んでいると感じられる面もあった。次回の訪問時にはニヤゾフの政策を冷静に振り返る時期にさしかかっていると勝手に信じることにし、またナターシャに聞いてみたい。   



37.結局北朝鮮っぽいのかトルクメニスタンは?

 このレポを書き上げるため関連資料、本、ネット検索でデータを集めたが、以前民放がトルクメニスタンを題材にして「明るい北朝鮮」としてレポしたことがあるという。トルクメニスタンが明るいのなら北朝鮮は暗いということになるが、北朝鮮って本当に暗いのだろうか?

 北朝鮮は独裁者の下で民衆が呻吟しているというイメージが強いが、彼らは本来韓国人と同じように、歌と踊りが好きでおしゃべり好きな明るいヤツらなのだと思う。しかしそれを不気味に覆っている何かがあると訪朝するたびに感じる。

 トルクメニスタンは天然ガスという資源に恵まれ、街がどんどん郊外の砂漠を侵食しているように見える。街の中心部でも建物が次々に白い大理石に変えられている。警察官が異常に多いと感じたが、それは私の宿泊エリアが国の中枢部近くだったからだろう。ただ北朝鮮と共通しているのは最高指導者の露出度が異常に高いということである。

そういうわけで、北朝鮮とトルクメニスタンを一覧表で比較してみた。採点は私により10点法で行われる。いずれかを10とし、それを基準にもう片方を採点する。偶然のバッティングにより試合続行が不可能と判断した場合は、4R以降試合が停止したラウンドまでの採点結果で勝敗を判断する(なんのこっちゃ)。

採点対象   北朝鮮  トルクメニスタン 解説のあんでんださんのコメント
肖像画密度   10  3 ・アナウンサー「意外な大差がつきましたが。」
・あんでんだ「ひとえに一般家庭の中に肖像画があるかないかに尽きます。北朝鮮ではフツーの家庭に主席と将軍様の肖像画が飾ってあります。それは平壌の街を歩いていてナニゲにアパートの窓に目を向けるだけでも確認できます。」
・アナ「なるほろ。レポ(2)でトルクメニスタンの一般家庭には肖像画がないことが確認できてますからね。」
・あん「あの時は『この客、いったいナニ言ってんだ?』ってな目で見られましたしね。」
・アナ「今後の展開は?」
・あん「ネット新聞を見ると、新しい建物のオープニングセレモニーがあるたびに、二代目の肖像画が飾られていることがわかります。例えばこれ。」
・アナ「なんだか人民が嬉しそうに踊ってますね。」
あん「二代目肖像画には真面目バージョンとハトバージョンがあることをレポ(3)で指摘しましたが、新バージョンが現れつつあるようでロキロキします。ただ一般家庭に飾らない限りこの差は縮まらないと思われます。」
銅像密度     10 ・アナウンサー「平壌は銅像だらけという印象がありますが。」
・あんでんだ「実際はそうでもありません。金日成主席の銅像は万寿台の巨大なものが知られていますが、日本人観光客が訪問する都市にも必ずあります。」
・アナ「一都市一銅像ってワケですか?」
・あん「黄金色に輝く銅像はそうなんだと思います。平壌はもっとあるのかも。」
・アナ「あんまり多いとありがたみが薄れるとか。」
・あん「博物館や大学にも金日成主席の銅像はありますが、ほとんどは白い石でできたものです。従って黄金色の銅像密度てゆっか、街歩きしていての『また出た感』はトルクメニスタンの方が強いと言えます。」 
スローガン密度   10   ・アナウンサー「本文中ではあんまりスローガンに触れていないように思いますが。」
・あんでんだ「だってオレトルクメン語さっぱりわからないし。」
・アナ「ふてくされてどうするんですか。」
・あん「初代の銅像の近くにはスローガンてゆっか称える文章が石に刻まれていたと記憶してるけどな。」
・アナ「要するによくわからなかったと。」
・あん「でも北朝鮮ほど密集度は高くないと思う。平壌では街のあちこち、アパレル工場の中、機関車、いたるところに見られた。最近なら『強盛大国』とか『先軍政治』とか。98年当時なら『苦難の行軍』。スローガンで時代がわかったりするもんな。」 
観光自由度       10 ・アナウンサー「そもそも北朝鮮に観光自由度なんてあるんですか?」 
・あんでんだ「以前開城レポ(5)で触れたけどコースの中の自由はあってもコースを外れる自由はないんですよ。」
・アナ「それって自由度がないってことでは?」
・あん「そうなんだけど、以前希望したらライトアップされた夜の主体思想塔に連れていってくれたことがあった。二千円取られたけど(笑)。」
・アナ「ちゃっかりしてますね(笑)。」
・あん「外国人に見せていいところ限定で、案内員に裁量権があるんだと思う。でもあの2千円はどこに消えたのかね(笑)。」
・アナ「レポ(2)で監視してくれると思っていたナターシャがあっさり帰ってしまって肩透かしくらってますね。」
・あん「今にして思うとこっちの思い込みが強かったのかとも思うけど、朝も夜も外出しまくりだったもんな。」
・アナ「必ずガイドをつけることが旅行の条件なのにこのユルさは何だと。」
・あん「私は観光ビザだったんでガイド、宿泊、交通機関すべて事前に予約する必要があった。でもトランジットビザなら5日間の事実上の自由旅行ができる。」
・アナ「ワケわかりませんね。」
・あん「ナターシャもその辺の事情はよくわかってなかったみたい。最初から監視するつもりもなかったみたいだし。」
情報流入度  1  10  ・アナウンサー「レポ(9)で市内のネットカフェでネットをイジってますが。」 
・あんでんだ「うん。ホテルのビジネスセンターにもあったけど手続きがめんどうそうだったので。」
・アナ「携帯電話はどうでしたか?」
・あん「イジってみたけど『ネットワークにつながりません。』ってメッセージが出た。実際にかけてみればよかった。つながらないと思うけど。」
・アナ「トルクメニスタンではパラボラアンテナでみんな外国の放送見てるらしいですね。」
・あん「北朝鮮では外国人が泊るホテルでは日本やアメリカの放送も見られる。でも同じホテルでも地元民用の部屋では見られないってのがかの国らしいよな。」
・アナ「携帯電話は?」
・あん「そもそも持ち込み禁止だからわからない。でも高麗ホテルと外貨ショップで地元民が携帯電話使っているのを見たことがある。
夜の明るさ度    10  ・アナウンサー「レポ(7)で夜でも煌々と灯りがともった公園が出てきますが。」 
・あんでんだ「資源に恵まれているってのが北朝鮮との大きな違いだと思う。中立のアーチもアシュガバット駅もライトアップされてたし。」
・アナ「平壌も金日成像や主体思想塔はライトアップされていますよね。」
・あん「金日成像は一晩中ライトアップされているらしい。主体思想塔は夜10時で消えることが多いけど、大マスゲーム“アリラン”のようなイベントがあるともっと遅くまで明るいことがある。ただそういった革命記念碑的なものではない施設は早々に暗くなってしまうし、駅前通りも8時過ぎには人通りがなくなってしまうもんなあ。夕食のあとバスに乗ろうと外に出るとあまりにも暗いので驚くよ。」
マンセー度 10  4  ・アナウンサー「何ですかこのマンセー度って。」
・あんでんだ「いや人民がどの程度指導者に対してマンセーを叫んでいるかってこと。」
・アナ「アシュガバットの真ん中で?」
・あん「いやどこでもいいんだけど」。
・アナ「本文を読む限りトルクメニスタンではあまりマンセー度は高くないように思えますね。」
・あん「ナターシャに『この国の人はニヤゾフ氏をとても尊敬しているように見えるけど・・・』と行ったら『初代大統領だから当たり前です。』って言ってた。」
・アナ「でも過剰な言葉で褒め称えることはなかったと。」
・あん「うん。それなんだけどナターシャはずっと英語だったわけで、英語にすることによってほめ言葉を省略している可能性があるんだよなあ。」
・アナ「でも街のむんいきでいくらかわかるんじゃないですか?」
・あん「少なくともニヤゾフ銅像に花を捧げに来ている人は見なかったなあ。あ、それからナターシャは二代目になってから初代の時代に比べて教育に力を入れるようになった。いいことだと言ってた。」
・アナ「なるほど。でもそれは初代に対する批判ではありませんよね。」
・あん「そうそう。北朝鮮では政治批判はタブー。トルクメニスタンは実際どうだったんだろう。」
 合   計 45  49 

・アナウンサー「49対45でトルクメニスタンの勝利ですね。」
・あんでんだ「いやこれは点数が高いからエラいってもんじゃないんだよなあ。」
・アナ「トルクメニスタンの方が北朝鮮っぽいってことですか。」
・あん「トルクメニスタンが北朝鮮よりも4ポイント北朝鮮っぽくて、北朝鮮がトルクメニスタンより4ポイントトルクメニスタンっぽくないってワケわからんな。」


 なんだかワケわからん総括になってしまった。北朝鮮は事実上の世襲制であり、現在三代目への権力移譲がとりざたされている。それに対しトルクメニスタンは二代目が脱ニヤゾフ化進めていると言われ、それは今回の旅でも断片的にではあるが経験することができた。それにしても初代存命中に行っておきたかった・・・という思いが強く残るがそれはしょうがないことである。

 2009年9月、トルクメニスタンでは北朝鮮っぽい光景を見たが観光自由度については北朝鮮っぽくないことが明らかになった。今後、二代目はこの国をどういう方向に導こうとしているのだろうか。それによってこの国の北朝鮮っぽさも変化してくるのだろうと思う。
 
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